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【百年銘酒スポットライト】vol.1
百年銘酒が誇る、秘蔵のウイスキーコレクションをコラム形式にてお伝えします。


__2001年5月29日、我々はアイラ島へ向かう小さな飛行機に乗りこんだ。

隣席にはウイスキー評論家として名高い故マイケル・ジャクソン氏の顔もあり、あらためてこのフライトがいかに特別なものであるかを実感したものだ。
乗客の目的はというと、休眠していたブルイックラディ蒸留所の再オープンセレモニー参加のため。

そして島へ降り立ってまず目にしたのは、はるばる訪れた来客を出迎えに集まった大勢の島の人々だった。飛行機を降りた我々は、まるで自分が映画スターだと錯覚させられるような大歓迎を受けたのだ。

お祭り騒ぎの賑わいの中、蒸留所へ到着すると歴代の蒸留所関係者によるテープカットが厳かに挙行され、その門が開いた。

博物館のような長い歴史を感じさせる古い蒸留所は、リニューアル後も変わることなくクラシカルな佇まいを見せていた。ガイドに導かれながら、集まった人々が列をなし次々に入場してゆく。

それはまるで皆が蒸留所の懐に引き込まれてゆくかのような、胸を熱くさせる光景であった。

蒸留所内を一通り見学した後に現れたのは、ウイスキーで満たされた樽が並んだスペースだった。

そこで希望者はお金を払い空のボトルを受け取ると、ヴァリンチと呼ばれる大きなスポイト状の器具で樽からウイスキーを直接汲み上げ、瓶に詰めた。
その後自らの手で蝋キャップによる閉栓を行い、スタッフに手書きのラベルを貼ってもらって完成したのがこの記念すべきメモリアル・ボトルだ。

飛行機から降りた時に吸い込んだ島の空気、人々の熱気と祝祭に酔ったような視線、そして蒸留所が放つ名状しがたいエナジーのすべてが、この瓶の中に詰まっているのだ。
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