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【百年銘酒スポットライト】vol.4
百年銘酒が誇る、秘蔵のウイスキーコレクションをコラム形式にてお伝えします。

_SPRINGBANK 21YO

キャンベルタうンにあるスプリングバンク蒸留所。

昔から「モルトの香水」と称され、もっとも塩味が顕著に感じられる「ブリニー」なキャラクターで知られているが、ウイスキー評論家の故マイケル・ジャクソン氏から最高ランクの評価を与えられた蒸留所としても有名である。

このボトルは1980年代に蒸留所元詰めでリリースされた、オフィシャルのスプリングバンク21年。

丸みをおびた太い瓶、通称ダンピーボトルに詰められたこの作品は、ノンヴィンテージ、15年、25年のクラスが設けられていた。なおこちらの21年は1960年代の原酒だと推測されており、当時のシェリー感、またイチゴのような香味に魅了された愛好家も多かったのではないだろうか。

その忘れがたい官能的な香味は今もなお多くのスプリングバンクファンを惹きつけて止まず、かく言う私もそんなファンの一人としてついついその行方を追ってしまう。

しかし今から5年前のこと、スプリングバンクのオフィシャルボトルがモダンなデザインへ一新されると、そのスタンダード品となる10年物がモルトラヴァーたちをどよめかせた。

オレンジ、ピーチ、パイナップルのような、これまでとはまた違った際立つフルーツ感に驚嘆の声が続々と上がり、ほどなくこの10年物は世界中で爆発的な人気を呼ぶこととなった。

そしてもともと生産量が少なくボトラーズからのリリースも稀だったモルトだけに、このスタンダード品ですら市場で見かけられなくなってしまったのだ。

クラシックとモダン、どちらが優れているかという問いはもはや愚問だろう。

どちらも本当に素晴らしいと感じさせてくれるボトルに出会えたことは、ただ幸福の一言に尽きる。スプリングバンク、この銘柄に深く感謝したい。
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